ライヴ!小品集  

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2009年7月発売開始。
使用ピアノ、ニューヨーク・スタインウェイD、1989年製、および1887製「ローズウッド」
浜離宮朝日ホールにて2004年5月25日、11月26日、2005年6月29日、2006年7月4日録音。

レコード芸術誌2009年10月号、特選盤


2004年から2006年にかけて東京の浜離宮朝日ホールにて「東欧」「ロシア」「アメリカ」「フランス」の音楽をテーマにした四回のリサイタルを行った。偉大な作曲家達によって作られた膨大な作品群から私が選んだのは、ピアノという楽器によってできる表現(ピアノでしかできない表現?)を楽しむものばかりである。よって、普段あまり演奏されない編曲ものも多い。聞き慣れたオーケストラ曲が、器楽曲が、または歌がピアノで演奏されるとまた全く別の表情を見せる。
将来は聖域「ドイツ・オーストリア」や「北欧」「南欧」或は「南米」も?と夢は膨らむ。私の住んでいるNYには世界中の文化と言語が集まっているのだから。

江口 玲


「ここに収録されている曲の多くが名人芸的な華やかなパッセージに彩られていると同時に内面的な深みを感じさせる。それらを江口はあたかも自らの即興のように、絶妙なタイミングでテンポを変え、アゴーギグを施し、ダイナミックかつ流麗、濃密な情感とたっぷりとしたロマンティックな詩情をもって奏でている。<ユモレスク>ですらそうなのだ。さらにライヴであることによって、そこにある種のリアリティが加わっている。要するに楽器と演奏スタイルと解釈、環境が見事に合致しているのだ。こういうアルバムは気持ちがいい。」 「全体にわたり、これほど美しく多様で輝かしい「小品リサイタル」はめずらしい。」(レコード芸術2009年10月号)



   
チェコの作曲家、ヨゼフ・スーク(1874-1935)の19歳の時の作品で、後にオーケストラとヴァイオリン、ヴァイオリンとピアノ等に編曲された。同名の父よりピアノ、ヴァイオリン、オルガンの手ほどきを受け、後に師であるドヴォルザークの娘と結婚した。またスーク・トリオのヨゼフ・スークは孫にあたる。
「愛の歌」はピアノ的というよりはオーケストラを前提とした響きを感じさせるが、後の作品に見られるような独自のハーモニーはまだ現れない。しかしながら、素朴なロマンティシズムに溢れるこの曲は、現在でも東欧の演奏家達に好んで演奏されている。


ポーランド出身で、1926年にはフィラデルフィアのカーティス音楽院の楽長となったヨーゼフ・ホフマンは、自作の小品を多数残しており、「サンクチュアリ」は自身による演奏がCDに復刻されている。鐘を模した短い序奏のあと、春の青葉の合間を吹き抜けるそよ風のようなアルペジオの中に、鐘の音あるいは鳥の声が聞こえ、そして時にその風は、大木の生い茂る葉を吹き飛ばさんほどの勢いをもって聖域を自由に駆け巡る。聖域に足を踏み入れた者のみが見た幻影のようでもある。


アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)は、チェコを代表する作曲家であるが、この「ユーモレスク」は誰でも一度は聴いたことがあるにもかかわらず、演奏会で取り上げられることのほとんどない名曲である。どちらかと言うとヴァイオリンとピアノに編曲された物の方が有名であり、古くはエルマン、クライスラーといった名手達によって広められた。


ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)はこのドゥムカに「ロシアの農村風景」と副題をつけている。ドゥムカとはロシア語で「想い」を意味する単語であるが、スラヴ言語圏で曲名として使われる場合「哀歌」と訳される。スラヴ民族にとって「想い」とはそれほどまでに哀しいものなのか?夜の平原に静かに止むこと無く降り続ける雪、明かりのともされた小さな家の中から聞こえてくる物悲しい歌、農民の舞踊、どこまでもロシア的な風景である。


魔術によって白鳥にされた乙女たちは、夜の間だけ人の姿に戻ることができる。月明かりの中、美しい乙女の姿に戻った4羽の白鳥が踊るつかの間のダンスを、ピアノの名手アール・ワイルドが愛らしいピアノの小品に編曲した。


フォスター(1826-1864)の有名な歌曲「Beautiful Dreamer」をアメリカの女流作曲家が編曲。時代の流れは、裕福な家庭に生まれたフォスターの生活をも大きく揺さぶった。奴隷制が当然であった頃、「ミンストレル(黒人に扮した白人の芝居)」の作曲家として「草競馬」「おおスザンナ」などで名を馳せたフォスターも、南北戦争が始まることにはヒット曲もほとんど無くなり、酒におぼれ肺を病み短い生涯を閉じた。自ら安らぎを求める「Beautiful Dreamer」(和訳は夢見る人、が一般的だが実際には、夢見る精霊、の方が近い)は死後に発表された、彼の最後の作品である。「夢見る精よ、私のために目覚めて!巷の雑踏も、苦労も、今はもう全て去って行った。だから私のために目覚めて!」


マクダウェル(1860-1908)は、パリ留学中にドビュッシーと共に学んだが、その作風はむしろ伝統的ロマン派を忠実に受け継ぎ、国民楽派の影響を受けた作曲家として知られる。ヘクセンタンツはやや個性には乏しいものの、ピアノ音楽としては愛されるべき小品である。


ラ・フォンテーヌの寓話からヒントを得て作曲された。まどろむ猫のすぐ近くをちょろちょろと走り回るネズミ。目を覚ました猫はしっぽをゆっくりと降りながら、様子をうかがう。やがて猫は抜き足差し足で獲物に近づいて行き、いきなり飛びかかる。大慌てで逃げ回るネズミ、追いかける猫。やがて猫に鋭い一撃でネズミはふらふら、よたよた。ユーモラスな描写である。


美貌の遊女タイスと若き僧侶アタナエル(パフニュス)。アタナエルの導きで信仰の道に救いを見いだしたタイスに、不覚にも恋心をいだいてしまったアタナエルの苦悩。半狂乱のアタナエル、静かに修道院で命を終えるタイス。 ジュール・マスネー(1842-1912)のオペラ「タイス」の最終場をカミーユ・サン=サーンスが編曲した。有名な「瞑想曲」のメロディーも含まれている。


巨匠ヴラディミール・ホロヴィッツ(1903-1989)は、若い時期からこの「カルメン」を主題にした変奏曲を演奏してきた。演奏年代により少しずつの変化が見られるが、若い頃のものは技巧的要素が多く、後年になるにつれ音楽的な表現に傾いて行く。今回は私自身の個人的好みで、それぞれの年代から好きな部分を集め統合することにより、技巧的でありながら音楽的、な再編版を演奏する。






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